前夜は小樽のホテルに宿泊し、朝から1時間ほど車を走らせ向かったのは北海道は余市町にある「ニッカウィスキー 余市蒸留所」。
日本ウィスキーの父と言われる「竹鶴政孝」によって設立されたニッカウィスキーの原点とも言われる場所です。ここで作られるのがあの有名な「シングルモルトウィスキー 余市」。お店で目にすることはあれど、スッと手が出せるお値段ではないので私はこれまで飲んだことはありませんでした。
駐車場に車を停めると、まず目に入ってくるのがこちらの「ニッカ会館」。なかには飲食店や土産屋があるのですが、ここでのお楽しみはやはりコレでしょうね。
なかではウィスキーの無料試飲ができます。
ちなみに私が訪ねた時に用意されていたのは、「アップルワイン」、「竹鶴」、「スーパーニッカ」の3種類でした。それもグラスに結構な量入っていました。ニッカさんかなり太っ腹です。
ですが・・・私は飲めません。だってドライバーだもの(泣)。
血の涙を流して我慢します。(帰りに土産のウィスキーを買うことを固く決意。)
「運転手です。飲めません」と書かれたドライバーシールをこれ見よがしに胸に貼り、ドライバー用に用意されたアップルジュースを頂きます。そういえばニッカの前身だった「大日本果汁株式会社」は余市産のリンゴを使ったリンゴジュースを作っていたそうですね。
私が飲んだリンゴジュースが余市産のものかは分かりませんが、そのことを意識してリンゴジュースを提供しているのかもしれません。
それにしても1人3杯も飲めるうえに結構な量が入っているせいか、試飲ですでに酔っぱらっている人をチラホラ見かけます。ここでつまみでも出そうものなら完全に飲み屋です。
そんな飲兵衛たちが集まる空間を早々に出て、蒸留所内の見学へと行くこと。
まずは「ウィスキー博物館」から。
私自身ニッカウィスキーはよく飲むのですが(安いものを)、ただ飲んでいるだけなので、ここに展示されていたニッカウィスキーの歴史や製造方法、創業者である竹鶴政孝の生涯などは見ていて面白いものばかりでした。
特に創業者である竹鶴政孝氏のウィスキー作りにかける情熱には鬼気迫るものを感じます。氏がスコットランド留学中に書き記したという「竹鶴ノート」を見ると、本当に丁寧で綿密に書かれているのが分かります。
その本場スコットランドで学んだ技術を持ち帰り、「日本で本物のウィスキーをつくる」という夢に生涯をかけたというのは有名な話。そして竹鶴氏の生涯を語るうえで欠かせないのがスコットランド留学中に出会い、竹鶴氏の人生の支えとなった奥様のリタさんですが、その馴れ初めから最期に至るまでのエピソードもここには展示されています。
とにかく観るべきものが多く、この博物館だけでもじっくり観賞しようと思うと小一時間は必要になるかもしれません。
博物館を出ると、その先にある貯蔵庫を見学できます。
見学用なのでおそらく中身はカラでしょうが、これだけ並ぶと厳かな雰囲気を感じます。なかは少しだけ涼しかったですが、扉を開け放っていたので実際の保存環境とはかなり違っているのでしょう。
さらに先へ進むと、竹鶴政孝・リタ夫妻の旧邸宅があります。ちなみにこちらは余市町郊外から移築したものだそうです。
家の外観は西洋風ですが、庭には灯篭が置いてあったり、和洋折衷のデザインになっているのが分かります。奥様が寂しくないようスコットランドにある生家そっくりに造られたのだとか。できる男は優しさが違いますね。
決して豪邸というわけではありませんが、品が良くこじんまりとした印象のお洒落なお宅でした。
邸宅内には政孝氏とリタさんの写真、資料などが展示してあります。
朝の連続テレビ小説「マッサン」で注目を集めてからしばらく経ちますが、やはりあのドラマの影響力は大きかったようですね。観光客の「あ、マッサンだ。」という声が何度も耳に入ってきました。
「玉山鉄二に似てない」という声も聞こえてきましたが、逆に似ていたらそれはそれで驚きです…。
写真に写っている竹鶴政孝氏は、おそらく朝ドラ時の玉山鉄二さんよりも若い頃のものだと思いますが、すでにたたずまいに威厳が感じられます。青年というにはちょっとはばかられる雰囲気。逆にリタさんの方はこの写真だと少し幼く見えます。
近くには「リタハウス」もありましたが、ここは残念ながら中を見学することはできませんでした。もともとは事務所兼研究室として使われていたそうです。
リタハウスの先に行くと、赤いトンガリ屋根が立ち並ぶ後景が広がっています。これらの建物ひとつひとつがウィスキー作りに必要となる役割を担っています。この辺りは朝ドラの撮影でも使われていたようなので、見覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。
見学できる箇所は多いですが、個人的に一番見ごたえがあったのが蒸留塔の内部。
ここでは世界でも希少な「石炭直火蒸留」の設備を目にすることができます。温度調節が難しい石炭を使い、適切な温度を保ちながら石炭をくべる熟練の技術が必要になるため、今ではここでしか使われていないのだとか。
実際に使われている石炭の重さを体験することができましたが、めちゃくちゃ重かったです。もしこの作業をやれと言われたら、確実に腰がやられます。素人はぎっくり腰まっしぐらでしょう。
うん、こういうものを見聞きして体験すると、良いウィスキーがそれなりのお値段なのも十分納得ができます。
そして見学ルートの終着地が「余市蒸留所」の正門。
本来は正門から周るのが王道かもしれませんが、正門・駐車場どちらから入っても見る順序が変わるだけなので特に問題ありません。ただ、ガイドツアーに参加するという方は正門に受付があるので、正門側から入った方が良いでしょう。
今回、私が訪れた日はごく普通の平日で、特に混む時期でもありませんでしたが、それでもバスに乗ったツアー団体客が沢山訪れていたので、休日・祝日はさらなる混雑が予想されるかと思います。
個人的に「ニッカウィスキー余市蒸留所」は以前から行きたいと思っていた場所だったので、非常にゆっくり見て周ったため3時間近く滞在しましたが、効率よくサッと回れば1時間弱、それなりにゆっくり過ごしても2時間もあれば十分かと思います。
それにしても、このボリュームで見学料がかからないというのは驚きです。まぁ土産物売場でウィスキーが飛ぶように売れていたので、採算は十分取れているのでしょうね。
残念ながら朝ドラ効果もあって「シングルモルト 余市」は原酒不足により販売終了してしまいましたが、ここは見て周るだけでも十分楽しめるので、ウィスキー好きの方も「マッサン」好きの方も機会があればぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょうか。
蒸留所巡りを趣味にするのも面白いかもしれませんね。
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